技術解説

19. 自己保持形ソレノイド(KPS)動作説明

自己保持形ソレノイド(KPS)は、SDC タイプのソレノイドに永久磁石を内蔵させたものです。無通電状態でも永久磁石の磁力による保持力(無励磁保持力)が得られ、長時間の無通電保持が必要な用途に最適です。

19-1.吸引動作

  • 内蔵の永久磁石の磁気力に、励磁コイルによる電磁力が加算されるように通電し、吸引力を増加させ可動鉄心を吸引します。
  • 動作電圧の印加時間は、ストロークや負荷などによって異なりますが、30~150ms 位で動作します。

19-2.復帰動作

  • 無励磁保持状態の可動鉄心を復帰(開放)させるには、永久磁石の磁力を打ち消すように、吸引動作と逆極性の電流をコイルに加えて保持力を小さくし、スプリング等の外部の戻し力によって可動鉄心を引き離します。復帰動作電流(電圧)は、保持力が戻し力よりも小さくなるように設定する必要があります。
  • KPS ソレノイドに通電したときの保持力の変化は、図8 のようになります。電流0 のときの保持力(無励磁保持力)は”A”です。コイルに加える復帰電流を0 から徐々に大きくしたとき保持力は徐々に小さくなり、”B”に達すると永久磁石の磁力を完全に打ち消して保持力は0 になります。さらに復帰電流を大きくすると励磁コイルによる保持力が発生して徐々に大きくなり、”C”に向かって変化します。

可動鉄心を引き離すには保持力が戻し力よりも小さくなるようにI1~I2 の範囲の電流を加える必要があります。
電圧を加える場合は、E=R×(I1+I2)÷2 がほぼ最適値になりますが、コイル抵抗値(R)は温度によって変化しますので、使用温度範囲とソレノイドの自己発熱を考慮して決める必要があります。
復帰電圧(電流)の印加時間は、コイルのインダクタンスや戻し力の値によって異なりますが、概ね30~100ms です。
これらの電流値・電圧値は、ソレノイドの種類とコイルの定格、戻し力によって異なりますので、当社までお問い合わせください。

当社のKPS タイプのソレノイドは、2 リード式(動作・復帰コイルが共通)を標準タイプとしていますが、特注品として動作コイルと復帰コイルをそれぞれ独立に設け、一端を共通端子とし3 リード式も製作可能です。

3 リード式(KPS タイプ)
1つのボビンに2 つのコイルを巻くので、吸引力の効率(同じ電力での吸引力値)は2 リード式よりも劣りますが、復帰コイルが独立していますので、動作電圧と同じ極性・同じ電圧値での使用が可能です。

19-3.駆動回路

  • 駆動については、使用方法により色々な工夫がありますが、参考までに、一般的な回路例を図9~図12 に示しました。