技術解説

15. 残留保持力と鉄心戻し力の関係

鉄を磁界中で磁化させた後、磁界を取り去っても鉄に僅かな磁束が残ります。この磁束を残留磁束、または残留磁気と呼びます。
ソレノイドに通電して鉄心が吸引した後、通電を切った場合にも磁路中に残留磁気が発生します。この残留磁気による保持力を残留保持力と呼び、鉄心を戻す時の戻し力を決める目安となります。
残留保持力は、鉄心保持面の形状(面積)と磁気回路の磁化特性、励磁起磁力の大きさ等によって決まります。このカタログに記載されている特性のものでは、小さい機種(鉄心径φ7 以下)で20~30g、大きい機種(鉄心径φ8 以上)で50~70g 程度あります。カタログ記載以外で保持力の大きいF 形、FT 形(図5 参照)の鉄心では、200~300g になるものもあります。
鉄心の戻し力は、この残留保持力と、摩擦力、鉄心の質量を加味して決める必要があり、少なくとも下記の戻し力が必要となります。

消音付のソレノイドでは、鉄心間にエアー・ギャップがあるため残留磁気は非常に小さな値となり、残留保持力も殆ど0 になります。従って戻し力は鉄心自重と摩擦力に若干の余裕を加えればよいことになります。
永久磁石を使った自己保持形ソレノイドの戻し力については、「19.自己保持形ソレノイド(KPS)動作説明の解説を参照してください。