技術解説

11. 吸引力の低下

ソレノイドの吸引力変動要因として、以下のことが考えられます。

1.コイル温度変化による吸引力値の変動

吸引・保持力は理論上起磁力(アンペアターン:AT)の2乗に比例します。コイル(銅線)の巻数は一定なので、電流値の2乗に比例するとも言えます。
コイルの温度が変化すると、銅線の抵抗値は表の抵抗係数を掛けた値に変化します。従って、吸引・保持力も理論上、吸引・保持力係数を掛けた値に変化します。つまり、温度が上昇すると抵抗値が上がり、電流値は下がることになり、吸引・保持力は低下します。

温度(℃) 0 20 60 100 120
抵抗係数 0.92 1 1.16 1.31 1.39
吸引・保持力係数 1.18 1.00 0.75 0.58 0.52

理論的には、コイル温度100℃の時の吸引力特性は、カタログ記載の初期の値の0.58倍になります。

2.電圧変動による吸引力値の変動

電源電圧の変化が吸引力に及ぼす影響については、次の2つの場合が考えられます。

  1. 電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与えない場合。
    電源電圧の変動がきわめて短時間の場合やソレノイドの使用時間がきわめて短い場合等は、電源電圧の変動がそのまま起磁力の変化となり、吸引力の変化となります。
  2. 電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与える場合。
    電源電圧の変化がコイルの温度上昇に影響を与える場合、電源電圧の変動により吸引力値も変化しますが、同時にコイルの温度も変化します。これによる吸引力値への影響と複合するので、電源電圧の変動の範囲を予め特定して、吸引力値の変動の範囲を知ることが、ソレノイドを有効に使用する秘訣となります。