お知らせ

「ケージーエス製品 私はこう使う!」第19回

2017.09.11

尾崎 大輔 様
使用機器:立体コピー作成機 PIAF(ピアフ)
使用内容:視覚障害者のための写真教室

尾崎 大輔 様 の写真
尾崎 大輔 様

ユーザーの方々にケージーエス製品の活用方法を語っていただく『コラム「ケージーエス製品 私はこう使う!」』

これを読まれている視覚障害の方は、写真を撮ることに興味はありますか?
もし自分の撮影した写真が、さわってわかる図(触図)になるとしたらどうでしょうか?

今回は、立体コピー作成機PIAF(ピアフ)を使って「視覚障害者のための写真教室」をおこなっている尾崎大輔さんに取材してきました。

視覚障害の人に写真を撮ってもらおうと思った、そのキッカケからご覧ください。

視覚障害の方でも写真をやってみようと思ってもらえるのではないか

年に2回、春と秋に「視覚障害者のための写真教室」を主催しています。

普段はプロのカメラマンとして、人物をメインに写真の撮影を行っています。

元々、ソフィ・カルというフランスのアーティストの「産まれつき目の見えない人に『この世で一番美しいものは何ですか』と質問し、その視覚障害者が答えたものを、ソフィ・カルが代わりに写真をとる」という内容の作品がとても好きでした。

ある時、イギリスで障害者と健常者が共演しているダンスの劇団を、写真集として撮っていました。その際に、劇団の中に視覚障害の方がいらっしゃったので、ソフィ・カルの作品とは逆に「目の見えない人に、『この世で一番美しいもの』を目の見えない人自身で撮ってみるとどうなるのか」ということをやってみました。すると、その方は一番美しいものを「人間」と答え、僕自身を撮ってもらいました。

これが、視覚障害者の方に写真を撮ってもらう、最初のキッカケです。

その後、国際視覚障害者援護協会(以下、援護協会)に留学に来ている視覚障害者の方を写真に撮ることがあり、その中でPIAF(ピアフ)を知りました。
プリンタで専用カプセルペーパーにモノクロ印刷し、インクが乾いたら、立体コピー作成機PIAF(ピアフ)に通すと黒いインクが印刷された部分のみ熱が加わり、その部分だけがふくらみますので、さわってわかる図(以下、触図)が作成できます。
援護協会の留学生にも、写真を撮ってもらっていましたが、PIAF(ピアフ)で写真を触図にすれば、写真のイメージを持つことができ、視覚障害の方が写真にもっと興味をもってもらえるのではないかと思い、PIAF(ピアフ)を使い始めました。

カプセルペーパーをPIAF(ピアフ)に通し、触図を作成されているご様子の写真
カプセルペーパーをPIAF(ピアフ)に通し、触図にしている様子

何を触図で出すのかが大事になります

写真教室は今年(2017年)の4月にも開催し、14回目を数えています。

写真教室では、参加者にデジタルカメラで写真を思い思いに撮っていただき、その後、写真を現像し、参加者皆さんの写真を掲示し、品評会を行っています。その際に、初めて参加された方の写真をPIAF(ピアフ)で触図にして、皆さんに触っていただいています。
それ以外の方の写真は後日、PIAF(ピアフ)で触図にし、郵送しています。

この写真教室は、視覚障害者の方だけではなく、様々な方に参加していただきたいので、一般の方も参加頂ける写真教室となっています。健常者の方はアイマスクを着用し、仮想視覚障害者を体験しながら写真撮影を行っています。

ガイドの方にサポートしてもらいながら写真を撮影しているときの写真
ガイドの方にサポートしてもらいながら写真を撮ります

PIAF(ピアフ)に通す前に、撮影した写真をPCに取り込み、画像編集ソフト「Photoshop」で加工します。これは、撮影した写真をそのままPIAF(ピアフ)にかけてしまうと、情報量が多すぎて内容がわかりづらいため、撮影した人に「何をメインにしたいのか」を聞き、メイン以外の部分を消すためです。作業をする中で、ここのヒアリングがとても大事になってきます。消しすぎてしまってもダメですし、そのままにしすぎても内容がわかりづらくなりますので、何を触図で出すのかを細かく確認します。

写真教室参加者の撮影した桜の花の写真
写真教室参加者の撮影した桜の花
触図の写真(メインの桜の花以外の情報を消すことで触った時にわかりやすくなります)
触図(メインの桜の花以外の情報を消すことで触った時にわかりやすくなります)

写真教室を通して、参加者の視覚障害の方々から知らないことをたくさん教えてもらいました。
例えば、水滴を写真に撮った方がいて、それをPIAF(ピアフ)で触図にして、触ってもらいましたが、そのとき初めて、その方は水滴の形はそれぞれ違うということを知りました。
また、公園の噴水を、音を頼りに撮影する人が多いのですが、触図にして初めて噴水との距離を感じたり、噴水の前に人に立ってもらって撮影したときに、写真内の噴水と人の大きさが違うこと(遠近法が存在すること)を知るということがありました。
撮った写真を触図にすることで、水滴の形や、遠近法など、彼らも初めて知ることがありますが、私も同時にそういった感動があることを教えてもらっています。

ありがたいことに、全国各地からお問い合わせいただいています。
病気などで高齢になられてから、視覚障害になられた方が、点字はわからないけど、触図はさわってわかるので、「孫の七五三の写真を触図にして欲しい」などの依頼を受けることがあります。
この機械がもっと一般に広まって、街の写真スタジオなどで気軽にこういったサービスが受けられるようになるといいなと思います。